【ポリリン酸とは?】
ポリリン酸は、リン酸が数個から数千個直鎖上に重合した高分子物質で、バクテリアから高等真核生物である哺乳類まで、あらゆる生物種の細胞内及び組織内に普遍的に存在している生体分子です。ポリリン酸が生命物質の1つとして認知され、生化学の研究対象になったのは1950年代からですが、その生理機能については近年まで未知の部分が多くありました。1990年代よりその代謝酵素の研究が進展し、生体内ポリリン酸の生理機能研究も同時に発展してきましたが、哺乳類のポリリン酸機能は現在でもほとんど未解決なのが現状です。
しかしながら、近年、ポリリン酸が繊維芽細胞増殖因子である FGF を安定化することが明らかになりました。また、ポリリン酸は FGF の安定化だけでなく、FGF と FGF 受容体の親和性も高める働きがあることがわかりました (Shiba et al., J. Biol. Chem., 278:26788-26792 (2003))。
FGF は組織の修復に大きな役割を持つサイトカインで、再生医療の分野で幅広く利用され研究が進んでいるタンパク質です。FGF の弱点の1つはそれ自体が非常に不安定であることであり、それを安定化させるポリリン酸の機能は、破壊された組織の修復を促進する機能をもつことになります。実際にポリリン酸が組織の修復を促進する効果のあることが動物実験や臨床研究でわかってきています。また、ポリリン酸は FGF の機能増強によって毛乳頭細胞の増殖も促進し、育毛効果を示すこともわかっています。
自然界でポリリン酸は海底火山の熱水中に含まれています。その意味で、ポリリン酸は原始生命の発生に貢献した物質の1つではないかと考えられます。自然界ではポリリン酸は生命を形作る基礎的な物質として非常に重要な生体高分子であると思われます。今後、高等真核生物におけるポリリン酸の生理機能解明がさらに進めば、生命現象の根幹に係わる重要な事象がさらに明らかになると期待されます。
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